廃液(液体)

大学で排出される実験廃液は、工場等から排出される廃棄物と異なり、その組成は千差万別であることから、環境汚染を防止し、安全な処理を行うためには、個々の廃液の性状、毒性、危険性を最もよく知っている排出者による的確な分別貯留と、排出者と部局担当者、部局担当者と環境安全センター、または部局担当者と外部委託処理業者との間での、確実な受渡しが不可欠です。
実験廃液は、重金属等の水溶液である「無機系廃液」(水銀は含まない)、有機溶剤または有機物質の水溶液(重金属は含まない)である「有機系廃液」に分類されていて、それぞれ月1回、専門業者に委託して集荷、処理しています。

なお、大学で取り扱う化学物質は多種多様であり、上記フローチャートでうまく分類できない実験廃液も多々あります。廃液分類が不明な場合は環境安全センターにお問い合わせください。

無機系廃液の処理

無機系廃液は、20Lの指定ポリ容器に分別貯留し、各部局の集荷場へ搬出してください。

*基本的に毎月第1木曜日に委託業者によって集荷します。

無機系廃液分別貯留時の注意事項

  • 固形物除去 :廃液中に固形物あるいは沈殿等がある場合は、防虫網等を用いてろ過する。ろ過した沈殿物等は「廃薬品等」(汚泥)として取扱う(成分表を付けること)。
  • 油分の分離 :廃液が、有機溶剤、潤滑油等の油分で2層になっているときは、油分を分離する。 分離した油分は「その他の有機系廃液(H-b)」として処理する。
  • 混入禁止物質 :核燃料物質、放射性物質及び病原性微生物等により汚染、またはその可能性のある物 悪臭・健康障害を引き起こす化学物質(ベリリウム、オスミウム、タリウム、セレン等)は「廃薬品等」とする。なお、極めて希薄ならば「水溶性有機物含有重金属廃液」とする。
  • 処理依頼時の条件に合致しない廃液は保管し、環境安全センターに相談する。
  1. (1) シアン・ヒ素廃液(記号B-a) シアン化物、シアン酸、チオシアン酸及びその塩、及びヒ化水素、ヒ酸等を含む遊離シアン及びヒ素化合物の廃液は、pH10 以上のアルカリ性水溶液とした後、貯留する。なお、水銀を除く重金属又は水溶性有機物が混入していても構わない。フッ素の含有量は15 mg/L 以下とする。また、シアン・ヒ素を含む廃液は、シアン、ヒ素のどちらを含むか明示する。
    *シアンを含む廃液は有毒ガスの発生を避けるためにpH >10 のアルカリ性
  2. (2) アルカリ性廃液(記号B-b) 重金属及び有機物を含まないアルカリ性水溶液
  3. (3) フッ素廃液(記号C) フッ化物、ケイフッ化物等のフッ素化合物・廃液は、pH>6として貯留する。
    *シアン及びヒ素の含有量は、それぞれ 1mg/L 以下とする。
  4. (4) 一般重金属廃液(記号D-a) 重金属イオン等の水溶液
    多くの重金属イオンはアルカリ性水溶液への溶解度が低いので、酸性水溶液として貯留する。 シアン・ヒ素の含有量はそれぞれ 1 mg/L 以下、フッ素の含有量は15 mg/L 以下、有機物の含有量は 4 g/L 以下とする。
    *無機系廃液の分別に当たっては、水銀、シアン・ヒ素、及びフッ素の有無が、この順に優先するので、「重金属廃液」は、これらの有害物質を含まない廃液とする。例えば、重金属廃液に、シアン化物が共存する場合は、「シアン・ヒ素廃液」とする。
  5. (5) 有機物含有重金属廃液(記号D-b) 含有有機物は水溶性のみとする。分離している油層(有機層)があるときは、必ず分液して、水層を無機系廃液、有機層を有機系廃液とする。有機金属化合物、金属カルボニル、EDTAやポリアミン等のキレート剤及び 4 g/L 以上の有機物を含有する廃液は、「水溶性有機物含有重金属廃液」とする。
    *シアン及びヒ素の含有量は、それぞれ 1 mg/L 以下、フッ素の含有量は 15 mg/L 以下とする。
  6. (6) 酸性廃液(記号D-c) 重金属及び有機物を含まない酸性水溶液
  7. (7) 写真廃液(記号E) 写真定着廃液 銀の回収を行う。 *写真現像廃液は写真廃液とせず、「その他の有機廃液」として処理する。
無機系廃液の分別表
分 類 テープ色 分別記号 対象物質 依頼時の条件
シアン・ヒ素廃液 B-a シアン及びヒ素化合物廃液水銀以外の重金属、錯シアン pH > 10水溶性
有機物は含有可
アルカリ性廃液 B-b アルカリ性水溶液 pH > 11重金属、
有機物は混入不可
フッ素廃液 無機フッ素化合物の廃液 pH > 6.0水銀以外の重金属、水溶性有機物は含有可
一般重金属廃液 D-a 重金属を含む廃液 有機物 <4 g/Lシアン・ヒ素<1mg/Lフッ素 <15 mg/L
水溶性有機物含有
重金属廃液
 + 黒 D-b キレート剤、または4 g/L 以上の水溶性有機物を含む重金属廃 有機物> 4 g/L
酸性廃液  + 橙 D-c 酸性水溶液 pH < 3重金属、
有機物は混入不可
写真定着廃液 銀を含む写真定着廃液 現像廃液は混入不可

有機系廃液の処理

有機溶剤、有害有機物の水溶液、濃厚洗剤廃液、廃油等を含んだ溶液は「有機系廃液」として処理します。ジクロロメタン、ベンゼン等の揮発性有機化合物については、厳しい下水道排除基準値が定められていますので、分液操作などでこれらの有機溶剤に触れた水も排水に流すことなく有機系廃液として処理して下さい。
研究室で分別貯留した有機系廃液は、部局毎に設置された有機系廃液集荷場のドラム缶に移し替えてください。基本的に毎月第4水曜日に委託業者によってドラム缶を集荷します。

有機系廃液の分別表
分 類 分別記号 対象物質 依頼時の条件
ハロゲン化 有機溶剤 H-a クロロホルム、四塩化炭素、クロロベンゼン等、主に塩素系の脂肪族並びに芳香族ハロゲン化物で、希釈されていない廃ハロゲン化有機溶剤、錯シアン 有機物以外の有害重金属等の濃度は、概ね排水基準以下水相 pH>7
その他の 有機廃液 H-b キシレンやベンゼンなどの非ハロゲン系有機溶剤 有機溶剤と接触した水、有害有機物質の水溶液 洗剤濃厚廃液、アンモニア水、油類、エステル類、 フェノール類、アルコール類、ポンプのドレン等のオイル

有機系廃液分別貯留時の注意事項

  • 固形物除去 一か所に有機系廃液をまとめて保管しようとするときは、消防法に適合するか否かを確認し、必ず危険物取扱者(甲種又は乙種4類)の指示を受けること。また、内容物が膨張して溢れることがあるので、温度が異常に上昇する場所での保管は、避けること。
  • 貯留に際しては、内容物の種類に応じて安全に保管できる容器を使用し、無機系廃液の貯留に指定されているポリエチレン製容器との共用、もしくは混同は絶対に避けて下さい。
  • 重合性化合物、高分子化合物、タール状物等で、貯留中及び他の廃液との混合により沈殿物を生ずるおそれのある場合は、これらの物質を有機系廃液に混合しないこと。
  1. (1) ハロゲン系有機廃液 ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、クロロベンゼン等の脂肪族並びに芳香族ハロゲン化物で希釈されていない廃ハロゲン系有機溶剤
  2. (2) その他の有機廃液 非ハロゲン系有機溶剤、有機溶剤と接触した水、写真現像廃液、有害有機物質の水溶液、洗剤濃厚廃液、アンモニア水、油類、潤滑油、エステル類、フェノール類、アルコール類等